建長寺(鎌倉五山) 雲龍図  

建長寺(鎌倉五山) 雲龍図  

2000年(76歳)に鎌倉・臨済宗建長寺派大本山建長寺の法堂に天井画『雲龍図』を奉納。(拡大可)

建長寺天井画雲竜図

 

建長寺境内の120畳の大庫裏で、1年7か月の製作期間を経て製作。撮影:小笠原清彦/日本経済新聞出版社『われの名はシイラカンス三億年を生きるものなり』より(拡大可)
――天空にあって地上を見下ろし、人間のさまざまの災害に対して庇護を与えてくれる、人類が一つの理想的な動物として空想を凝結したものが龍なのであるから、恐らくその寿命も桁外れに長く、数千年以上と考えられるから、例えば髭一本でも簡単には伸びないでトゲのようなものでなくてはならないし、鱗一つでもスンナリ表現したのでは鯉の鱗のようになってしまう。つまり体全体が長時間を経て成長していったものだから、その体のどの部分でも、空間を刻みこんでいくように’エグ,く表現していかなければならないと私は考えるのである。(文芸春秋刊『随想』より抜粋)

図録雲龍図制作風景

 

法堂への施工の様子。分割して描かれたパネルを組み上げる。(拡大可)
――建長寺の法堂は神奈川県の重要文化財になっているから、いろいろと拘束があって難しい。例えば今の天井の板を取り替えてそれに絵を描くということは許されないで、紙に描いたものをその上に張り付けるならまあ宜しいということである。
京都の五山のうち、大徳寺の天井絵の探幽の龍だけが紙に描いたものを張り付けてあるのだが、見たところこれが一番出来がいいようである。ごく最近、傷みが激しくなったために修理が行われた。京都の表具屋さんが独特の技法をもって張り替えたとのことだが継ぎ目もほとんど気が付かないし、墨色も感じが良い、つい昨日描いたというように新鮮に感じられる。先年起こった阪神の大震災の折りにも全く影響がなかったとのこと、私もその表具屋さんの力を借りて同じ方式で施工してもらうことに決めた。(文芸春秋刊『随想』より抜粋)

建長寺 法堂 天井画 雲竜図  施工の様子2